Pybricksは「Xbox コントローラー」や「LEGO Powered Up Bluetooth リモコン」とロボットの接続が簡単にできます。授業の終わりにはコントローラーでロボットを動かして、同じクラスのお友達と交流をしています。

リモコン
また授業の終わりに遊ぶだけでなく、授業においても「分析目的のコントローラー利用」という大切な役割があります。以下に紹介する2つは、試行錯誤のサイクル(デバッグや戦略立案)を一気に加速させてくれます。
直感的フィードバック
サッカー、相撲、レース、玉拾いなど、課題の中でお友達と対戦するときには、あえてプログラムで動かさずにコントローラーを使います。これはプログラミングと分離した機構検証です。
プログラムの優劣が介在しないことで、ロボットの仕組みによる違いだけをダイレクトに感じて、試行錯誤をする事が出来ます。コントローラーを使うことで直感的にフィードバックを得られ、仕組みの優劣の原因がすぐに分かるようになります。
現地調査(スカウティング)
「悪路でロボットが転びそう」「フィールドが広くて距離感がつかめない」。そんな「予測できない要素」がある時は、プログラミングの前にコントローラーで現地調査を行います。
- 挙動の確認
「この凸凹道、タイヤが空転したり、ロボットの向きが変わったりしないかな?」などをチェックします。 - リスク管理
「ここはスピードを出しすぎると危険だ」といった限界値をダイレクトに感じます。ハブにはスピードを表示して、どの程度のスピードまで問題ないかをテストします。

ここで使うコントローラーはON/OFFだけでは微細な調整ができないため、Powered Up リモコンではなく、Xbox コントローラーの「ジョイスティック入力」を使います。ジョイスティックは傾ける度合いで微細な調整ができる為、現地調査に適しています。

コントローラー
また、コントローラーで「たまたま1回うまくいった!」という奇跡が起きたとします。でもプログラムにするには「なぜうまくいったのか?」を論理的に分解できなければなりません。
「今の奇跡、進入角度は?」「助走のスピードは?」「乗り上げた瞬間にアクセルを緩めた?」
こう自問しても、答えは「感覚」という名のブラックボックスの中です。当然、中身が見えないままではプログラムに落とし込むことはできません。ここで、再現性を高めるための「2つの道」が見えてきます。
一つは、不確定なブラックボックスを回避する「別のルート」を探す道。 そしてもう一つは、徹底的な調査でブラックボックスをこじ開け、「奇跡の動き」を突き止める道です。
どちらのアプローチで再現性に挑むか。その戦略を練ることこそが、ロボットエンジニアリングの醍醐味です。
コントローラーの先にあるもの
お子様たちからは、よくこんな声が上がります。
「コントローラーで上手く動かせたから、もうこれでいいじゃん!」
確かに、自分の手足のようにロボットを操る技術は素晴らしいです。極めれば、プロの操縦士として活躍する道もあると思います。
しかし、人間にはどうしても「時間」と「場所」の限界があります。君が寝ている間や、遠く離れた場所にいる時はどうでしょう?君がコントローラーを置いた瞬間、ロボットはただの動かない箱に戻ってしまいます。
社会で活躍するロボットたち、例えば、今開発が進んでいる「車の自動運転」も目指しているのは「24時間365日、世界中どこでも、誰が乗っても安全に動くこと」です。これを実現するためには、一人の熟練した操縦士に頼り続けるのではなく、その技術をロボットに教え込み、判断させる「自律化(システム化)」が必要になります。
自動運転AIの開発でも、まずは人間が運転し、「ここでブレーキを踏む」「ここはゆっくり進む」といった膨大な操作データを集めることから始まります。コントローラーを通して感じ取った「ここは滑るな」「段差の前は減速だ」というその感覚こそが、優秀なロボットを作るための最も重要な「お手本(教師データ)」になるのです。
コントローラーで得た君の素晴らしい技術を、エンジニアリング(物理 × 論理)でロボットに託す。それによって初めて、君のロボットは君の手を離れ、いつでもどこでも、誰かの役に立てる存在になります。
当教室が目指しているのは、操縦テクニックの習得だけではありません。自分の経験や感覚をシステムに落とし込み、時間や場所を超えて社会を動かせる「エンジニア」の視点を育てたいと考えています。
